読書が好きな私が、今までに読んだ本を紹介するコーナー第3弾。前回の「野良犬の値段」の後、ビジネス書を挟んで手に取ったのがこの本なのですが、前半のモチーフと構成が非常に似ています。同時期に発表された作品なのでたまたまなのだと思われますが、どちらも世間的に見て「人」の価値を問う作品と言っていいでしょう。
作品を通して著者が問いかける事柄に対して、綺麗ごとと現実との葛藤を、読者も自分自身の思考の狭間を彷徨い、自身の身に起きたらどうするだろうと、最後まで考えさせられる物語です。
事件が一応の解決を見た後、後半部分の大どんでん返しは、詳しい説明は避けますが、救われたのか救われなかったのか、自分でも判断が付きかねるところであり、そういう意味では、今時の言葉でいう「イヤミス」に属する小説とも言えます。
このところ、期せずして社会派小説が多くなっていますが、それもまた思考の回路をフル回転させながら、自分の常識を見直す良い機会と捉えています。
文責:大久保